2008年7月28日

3Mのつくりかた

MITのビジネススクールであるスローンスクールの教授にエリック・フォン・ヒッペルという人がいて2005年にこんな本を出してる。

民主化するイノベーションの時代
サイコム・インターナショナル
4903241076

物やソフトを作るのが昔よりも簡単になってきたため、ものづくりの主体がメーカーからユーザに移りつつある、という趣旨の話だ。たしかに最近はゲーム機カメラなどはユーザによるハッキングが進んでいる。また、誰でもiPhoneで動作するソフトを作って売ることが出来るAppStoreなんかは良い例で、これはユーザイノベーションをちゃんとビジネスモデルの中に取り込んだ最初の例(販売価格の30%がAppleの取り分になる)じゃなかろうか。

この本の9章に、そうした傾向の中でメーカーの取りえる方法として3つの方法が載っている。

(1)ユーザの作ったイノベーションを製品に取り入れて売る、かつ/またはユーザのためのカスタム製造サービスを提供する
(2)プロダクトデザインのためのキットやツールを売る、かつ/またはプロダクトプラットフォームを売る
(3)ユーザイノベーションのために必要なプロダクトやサービスを売る

構成部品のモジュール化の進んでいるPCはユーザがスペックを指定してのBuilt-To-Orderが可能なので(1)を提供しているといえるし、ArduinoBug Labsなんかは(2)を提供してるといえるだろう。前述のAppStoreで売るソフトを作るために入ることが必要なiPhone Developer Program($99/年。エンタープライズ向けは$299/年)は(3)だ。

こうした動きはソフトウェアの世界が先行していたが、最近はオープンソースハードウェアなどという考え方もあるし、Nokiaは携帯端末用のSDKを配っているし、Canonもカメラ用SDKを配っている(ただしなぜか日本国内では配布してない。Canonに限らず日本の会社は囲い込み意識が高くオープン志向、ユーザイノベーション志向が見られない)。ヒッペル教授も以下のような例を挙げている。

GEのMRI装置のR&Dディレクターであるマイケル・ハーシュとその同僚は、GEのMRI装置においては、重要で商業的に重要な改良はほとんど全てがGEや競合他社ではなく、先端的なユーザ(Leading-Edge Users)によってなされていることに気がついた。また、ユーザが他社製品ではなくGEの装置を使ってイノベーションを起こした場合にその商業化がより簡単で早くできるということを知った。MRI装置は高価であるため、GEは重要な改良をもたらしてくれそうな人たちに安価で装置を提供するというポリシーを作った。(中略)マネージャーたちはこのポリシーがGEのMRI装置にとって商業的な成功の源泉になっていると考えている。


この本の10章では、以上の知見を生かして、3Mでリードユーザーに着目した商品開発(アンフォーカスグループの考え方に近い)と、従来から行われていた主な商品ユーザ層からニーズを探すという商品開発とを実際に行い、比較した結果がでている。結果はリードユーザーに着目した方が大きな成功につながり、また成功した商品はインクリメンタルな商品の改善よりも、新しい商品ラインに繋がることが多い、ということだった。

教授らはさらにこの結果を受けて、Scotchテープなどの1950年から2000年の間に3Mに導入された新しい商品ラインについても分析して、その性質がリードユーザーに着目した商品開発で出てきた商品に近いということを明らかにしている。

すごく大雑把にまとめると「退屈なマーケティングなんかするより何かエキセントリックな使い方してるユーザ探したほうがいいんじゃないの?」ということじゃなかろうか。

2008年7月27日

買い物雑記

アメリカで買い物をするとなると、食料品はスーパーで買うんだけど、そうじゃないものを買うときはだいたい車でモールに行くことになる。モールには大きく分けて二種類あって、
・屋内型
・屋外型
がある。屋内型だとちょうど横浜クイーンズモールみたいに、3階や4階建てぐらいの店舗のたくさん入ったビルを歩いて回遊するかんじ。店舗はだいたい専門店で、モールの末端にデパートが接続していることが多く、また一つのモールには二つ以上のデパートが付いていることが多い。ついでに書くとデパートも以下のような感じでクラス分けされている。

Saks Fifth Avenue
Neiman Marcus
--- 金に糸目は付けないライン ---
Nordstrom
Bloomingdale's
----- 庶民ライン -----
J.C. Penney
Macy's
Sears

屋内型だと


こんな感じに吹き抜けのスペースで販促活動をやってたりする(ちなみにこれはアメリカでは最近発売されたWii Fitの販促をやってるところ。通りすがりの人にやらせてるのだが、必ずロゴ入りの滑り止めつきの靴下を履かせて、プレー後もそのままプレゼントしておもてなし中)。

屋外型だと

こんな感じに中央に数百台から大きいところだと数千台は置けそうな巨大な駐車場があって、その周辺にこれまた巨大な店舗群がある感じ。当然同じモールの中でも違う店に移動するときは車で移動する。

今日はこの屋外型に行ってきたんでちょっと気になったものを時系列で載っけておきます。

まずは日本にもあるCostco。
お掃除ロボットRoombaがいっぱい売ってる。アメリカではもう家電として定着してんだろうか。

お値段なんと280ドル。日本よりだいぶお安く買えます。

このロボットを作ってるiRobot社は1990年にMITの人によって設立されました。ここまでがんばったなー。

猫大好きフリスキー。

在庫=レイアウトな米国ならではのパッケージ。今写真で見ると二種類の長さが違うブロックがあるんだけどどんな仕組みになってんだろう?

Targetに移動。ここは売上世界一企業・ウォルマート(総売上3778億ドル)に本気で勝負してる小売店。

ポストイットの母国はさすがポストイットの種類も豊富。

ポストイットWeekly Planner。よくわかんないけどなんか便利そうだ。

ちなみにポストイットの開発秘話はこんな感じ。

なんかへんな接着剤できちゃったんだけど何か使い道ない?
 ↓
ないな。(数年経つ)
 ↓
教会で聖書のしおりが落っこちた。しおりに使ってみたらどうだろ?
 ↓
作ってみた。でもぜんぜん売れないな・・
 ↓
ただでサンプルを配ってみた
 ↓
みんな使いまくり
 ↓
大人気

ベビーモニターというのも売っていた。全然知らなかったのだけどたしかにこれは便利かもしれない。カメラとモニタから構成されていて、カメラの映像が無線でモニタに飛ばされる。カメラの周りには赤外LEDが付いているので、暗闇でも見ることができる。日本でも売っていて、パンチルトできるものまであるそうだ。


フィリップスも出していた。これは映像はなく音声だけものもの。

ベビーモニター使ってたらNASAのスペースミッションの映像が映ったなんて記事もあった。わが子の映像みようとしたら宇宙服で船外活動してたらびっくりするだろうな。

専用ノートに書いてるときの音声を録音してくれるスマートペン。関連記事は以下。
コンピュータ内蔵のスマートペン「Pulse」- 手書き文字と音声を融合


家電をやめそうなGEはこんな電話を作ってた。フォトフレーム+電話。電話かかってきたらナンバーに対応した写真が表示されるそうな。電話じゃないときはフォトフレームに。


GEの祖・エジソンはベルが電話機の発明者とされるのに最後まで納得いってなかったんだそうです。

2008年7月26日

Samsung

近年韓国メーカーの躍進はすさまじいが、人間目に入ってくるものを現実と捉えるんで、韓国メーカーの製品の少ない日本にいるとなかなかその実感はしづらい。ところが米国に行くとSamsung、LGのロゴをやたら目にすることになるんで、その現実を実感する。
アメリカの電器屋で売ってるものがどんな感じかは、アメリカだとどこにいってもある電器屋にして世界最大の家電量販店、BestBuyのサイトを見るとわかる。
ここに2007年版のビジネスウィークのトップ100グローバルブランドランキングがあるが、その中から日韓企業を抜き出すと以下のようになる。

6 Toyota
19 Honda
21 Samsung
25 Sony
44 Nintendo
36 Canon
72 Hyundai
78 Panasonic
97 LG
98 Nissan

SamsungがSonyより上だったりHyundaiがNISSANより上だったりってのは日本にいると理解しがたいが、アメリカにいるとまーそうかもしれませんねと納得できるようになる。
そんなサムスン、LGは今期も好調だ。
サムスン電子の4―6月期、営業益2000億円に倍増 携帯など好調
韓国LG電子、営業益最高 4―6月、携帯電話部門が好調

サムスンの人、LGの人はMITにも来てるんでたまに昼ごはんを一緒に食べたりするのだが、特にサムスンに関してはアグレッシブな社風が伝わってくる。なんでもサムスンでは38歳ぐらいで一回、45歳ぐらいでまた一回定年のように首を切られるというおそろしい制度があるらしい。そんな状況があればそりゃ人間アグレッシブにもなるだろう。ちなみにそれを教えてくれた彼は「うちは奥さんが先生をやってるからそれが保険になってるんだ」と言っていた。
また、サムスンでは40歳で部長、45歳で役員になるのが一般的だそうで、それがまたアグレッシブさ、決断の早さに繋がってるかもしれない。
ちなみに韓国は労働時間もアグレッシブだ。

そんなサムスンがものを作るときにはリバースエンジニアリングを多用するのだそうだ。以下、
サムスン電子におけるリバース・エンジニアリング型開発プロセス
―イノベーションを追求することは競争優位の源泉につながるのか?―
(PDF)
からの引用。

サムスン電子における開発プロセスは、日本企業や欧米企業の新製品を複数ベンチマークすることから開始される。例えばテレビの開発においては、ソニー、松下、シャープ、日立などの新製品が分解される。そして、それらの新製品を構成するひとつひとつの部品から回路に至るまで、徹底的に構造調査が行なわれ、イイトコ取りの製品コンセプトが設計者の頭の中でつくられる。
このようなリバース・エンジニアリングのプロセスには、設計者はもとより、購買、品質保証、生産技術、生産管理の各担当者が 20~30 人ほどが集められ、多面的な視点から議論が行なわれる。具体的には、その製品を構成する部品に関して、どのような機能を果たしているのか、どこで売っているのか、コストはいくらくらいか、もっと安い代替部品はないのか、などの項目が主に検討される。そして、最終的に構造調査のプロセスのアウトプットとしては、サムスン電子で開発する製品のラフな2次元図面が作成される。


その代わりデザインにはすごく力をいれている。

デザインのプロセスは、サムスン電子がもっとも尽力している分野のひとつである。李健煕会長は 93年の『三星新経営』において、「デザイン革命」を標榜し、ソウルをはじめサンフランシスコ、ロサンゼルス、ロンドン、ミラノ、上海、東京にデザインセンターを設立した。そして、それまでは各事業部に離散していたデザイナーをこのセンターに集約した。現在、約 550名のデザイナーが従事しており、デザイン主導とも言うべき多大な権限を持たせている。

(中略)

(1)デザイン重視:リバース・エンジニアリング型開発プロセスの中で、サムスン電子が特に力を入れるのがデザインである。下手をすると、ターゲット製品の劣化版コピーにもなりかねないが、デザインに注力することで、地域専門家や営業部門の情報をもとに対象市場に合った魅力的なデザイン、その市場で先進的なデザインを生み出すことができている。極端に言えば、機能的には普通でも、デザインが良ければ、顧客の目には先進的な製品に映ることもある。


以下は製品アーキテクチャ視点からの韓国移動通信産業の成功要因と企業戦略(PDF)から引用。

とりわけ、携帯電話のようにプロダクト・ライフ・サイクルが短く、世界的なニーズの変化に対応して素早い製品投入のために、 三星の他の部門と違って、 携帯電話部署に関しては、製品デザインを除き製品開発ににおいては、CAD システムを利用しなかったことで知られている(朴他、2007)。すなわち、製品設計の統合性よりデザインを最優先し、製品開発期間を短くもっていくという戦略である。三星の内部でこうした例は多く、三星電子のヒットモデルの1機種である「スキン・フォン」も、技術チームよりはデザインチームの主張が優先的に反映された製品である。
当時の技術チームは、「スキン・フォンの‘青白いホワイト’色相は、数字などを刻む際、レーザーが色相を認識することができないようにするのみならず、 本体の両側の金属フレームは内部アンテナと衝突があり得る」と警告した。しかし、開発チームの反対にもかかわらずデザインチームはスキン・フォンのデザインを押し付け、結局関連技術開発が行なわれたという裏話がある(朴・朴、2007)。


あと、いわゆるプロダクトデザインをやるデザインセンターのほかにもデザイン戦略を決めるDesign Strategy Team、未来を予測して新しいプロダクトコンセプトやコンポーネント技術を探るDesign Research Team、ユーザの観察や異なるプロダクトラインでのUIの統一を図るUI Innovation Teamってゆうのがあるそうだ。このへんになるとデザインと聞いて普通想像するとこからは外れてくる。こんな感じに経営の中でデザインが重要視されてるとこはフィリップスに通じるとこがあるかなと思います。

Everyware: The Dawning Age of Ubiquitous Computing

Everyware: The Dawning Age of Ubiquitous Computing
Adam Greenfield
0321384016

今年の8月からNokia Design Directionを率いる予定のアダム・グリーンフィールドが2006年に出した本。彼については日本語でも以下の記事あります。4月にもMITに来てトークしていきました。
Everyware講演のビデオが公開
Adam Greenfield、エクスペリエンス・デザインの教訓を語る。
脱境界:ユビキタスデザインへの課題

「ユーザにとってはユーザインタフェースが製品そのもの」みたいなことが書いてあったのは確かこの本だったと思いますが、このグリーンフィールドの本の中では

いろんな形のユビキタス・コンピューティングはいずれ、ユーザから見たら一つの『everyware』というものとして見えるようになる

ということを言ってます(wareはsoftware, hardwareの語尾に付いてるwareといっしょ)。なるほど。
エッセイスタイルでThesis1から81までのテーマについて語ってます。
これから起こることについてみんなうすうす気づいてることをまとめた本で、目から鱗が落ちた!みたいなことは多分書いてないと思う(全部は読んでないもんで・・)んですけど、あそこでこんなことやってる、みたいな例証が豊富なとこがいいです。日本で仕事してたこともあるんで深澤直人を例に引いたりもしてます。

求人情報:Interaction Designer@IDEO

メーリングリストで求人情報がたまにまわってきますが、求人には求人企業が今やっていること・やろうとしていることなどが窺えるんで面白いのがあったら貼ってきます。

If interested please apply at ideo.com or contact *Maria Norelli. Recruiting Coordinator. **IDEO**. 485 Massachusetts Avenue Cambridge, MA 02139.

*Mid-Level Interaction Designer*
We are seeking a mid-level/senior interaction designer to join the IDEO Boston location. Candidates should have 5+ years of experience, and a focus on hardware / software integration and physical interface design. Candidates should show strong visualization and prototyping skills for both graphical and tangible user interfaces, and a clear passion for combining the two worlds through the design of compelling experiences. Candidates should demonstrate an ability to work across a range of projects, as well as comfort working in multidisciplinary teams, and excellent communication and problem solving skills. Additional areas of skills and perspectives are listed below.

1. Client facing skills
Successful candidates must be comfortable with clients and be able to effectively share their point of view and expertise. Candidates must be able to understand the scope and boundaries of projects.

2. User centered perspective
Candidates must truly believe in a Human-centered approach to design and be comfortable going out into the world for inspiration. They understand basic Human Centered Design methodology, are comfortable with ambiguity and want to push design methodologies.

3. Communication skills
Candidates must have strong presenting, verbal and written skills. They understand the business environment and what clients need to make something actionable and how to make clients feel comfortable throughout the innovation process. Additionally, successful applicants understand the value of design and brand within a design and business
context.

4. Team skills
Successful applicants believe that better work is done through collaboration and have the ability to lead and inspire teams through collaboration as well as direction, vision and
planning. The ability to relate to individuals and nurture talent also a requirement.

5. Technical skills (craft and tool mastery)
Successful candidates must know what excellence is. They not only identify and evangelize best practices, but are able to push new boundaries and explore new territory in order to deliver innovation.

6. Visual design sensitivity
Candidates for this position know the difference and spot the difference between good and great work and are able to nurture teams to deliver great work.

7. Prototyping skills
Successful applicants for this position understand that you succeed sooner by trial and experiments. Understand that prototyping can be done at many fidelities and have experience doing and leading that work. They understand that grounding ideas in concrete designs is the best way to gain learnings and move forward.

Additional skills required:

Information Architecture
UI Development for Functionality
Visual UI Development Skills, such as Flash (Actionscript proficiency preferred); Illustrator / Photoshop / Fireworks; Processing
Hardware Prototyping Skills, such as General electronics knowledge; Knowledge of sensors & actuators; Arduino programming; Microcontroller programming (such as PICs); PC board layout Machine shop & rapid prototyping skills are a plus

Interested candidates should apply on-line to upload a resume, cover letter, and PDF portfolio plus any web links, and/or work samples that demonstrate evidence of the above skillset.

2008年7月23日

The Next 4 Billion: Market Size and Business Strategy at the Base of the Pyramid

ノキアの決算に関するニュースがあった。
Nokiaの携帯電話市場シェアは40%に,ただし単価は低下

フィンランドNokia Corp.の2008年4月~6月期決算は,増収ながら減益だった(発表資料)。売上高は前年同期比4%増の131億5100万ユーロ,営業利益は同38%減の14億7400万ユーロ,純利益は同61%減の11億300万ユーロである。ただし,ドイツBochum工場の閉鎖(Tech-On!関連記事1,同2)に伴う費用など,一時的な要因を除けば,前年同期比で増益だったという。
携帯電話機の販売台数は前年同期比21%増の1億2200万台だった。アジア太平洋地域で同42%増の3640万台を売り上げ,同社の販売台数構成比で約 3割を占める最大区分となった。このほか南米の成長率が39%,中東アフリカが23%と高い伸びを示した。一方で北米の成長率は4%にとどまり,欧州では横バイとなっている。

四半期で売り上げは円に直すと2兆2千億円、純利益1840億円。
日本の携帯屋は結局世界市場からは消えてしまった。規格の違いというのはあるだろうけど、そもそもその違う規格に簡単に対応できるような体制をとっとけばもっと戦い方はあったんじゃなかろうか。そもそも市場を小さく見てたというのがあるんだろうけど。
最近はノートPCも低価格化してきたし、同じことはPCの世界でも起こりつつあるんじゃなかろうか。
携帯市場からは、高付加価値戦略は別にやってもいいけど、広がってく市場と顧客には常に対応しとかないと内弁慶になっちゃう、という教訓が学べるんじゃなかろうか。

ところで世界資源研究所ってとこから
次なる40億人: ピラミッドの底辺(BOP)の市場規模とビジネス戦略
ってゆうレポートが出てた。PDFでタダで見れる。気前のいいことだ。
10年前に出しといてくれれば日本の製造業の景色もずいぶん変わってたろうにな。

追記:携帯業界についてはものづくり経営研究センターに置いてあるペーパーがたいへん詳しいです。たとえば「製品アーキテクチャ視点からの韓国移動通信産業の成功要因と企業戦略」とゆうペーパーではサムスンが世界市場の中で高付加価値戦略を取りながら低価格帯へアプローチしていってることなんかが書いてます。

2008年7月17日

マイクロソフトリサーチ Symposium on Computational Photography

マイクロソフトリサーチがこんなもの公開してた。
MSR Symposium on Computational Photography
去年の7月18日にマイクロソフトリサーチでやったプライベートなシンポジウムの講演内容とそのビデオを公開してるようだ。太っ腹(ブラウザIEじゃないと見れないけど・・)。Google Tech Talksのマイクロソフト版か。

テーマはComputational Photography。SIGGRAPH2007におけるCG技術 及びCGコンテンツの動向調査報告書(PDF)に

Marks博士の指摘の通り、計算写真学関連の論文が極めて目立つようになった。これは、同分野が「ディジタルカメラの画像改善」「監視カメラの機能拡大」「画像関連アプリケーション(動画を含む)の機能拡大」という明確な目的を持っているため、ニーズ主導のR&Dが行なえるという強みがある。従来の「ロボットの目」としての画像処理、画像認識の頃はニーズがあったとしてのその声は小さく、R&Dを行う側も創造力、想像力を発揮する余地が少なかった。しかし、ディジタル家電分野は、豊富で多彩なアプリケーションを容易に推測できるとあって、多くの研究者の創造力を刺激し、これが古典的な画像処理、画像認識の時代には考えられなかった幅広い研究を生み出しているものと考えられる。

とあるように最近こうゆう研究が盛んだ。とくにマイクロソフトはよくやってる。

講演は以下のラインナップ。

- MERLからハーバード大に行ったHanspeter Pfister氏
「Factored Time-Lapse Video」

- ジョージア工科大Frank Dellaert氏
「4D Cities: Past, Present, and Future」

- マイクロソフトリサーチMichael Cohen, Matt Uyttendaele, Johannes Kopf氏
「Creating, Editing, and Viewing Very Big Images」

- The Hebrew University of JerusalemのDani Lischinski氏
「Image-guided optimization for interactive image manipulation」

- MIT CSAILのFredo Durand氏
「Computational Photography and Bilateral Image Decompostion」

- カーネギーメロン大Alexei Efros氏
「Using Data to "Brute Force" Hard Problems in Computational Photography」

- トロント大Aaron Hertzmann氏
「Removing Camera Shake from a Single Photograph」

- ワシントン大Noah Snavely氏、マイクロソフトリサーチDrew Steedly氏
「Object Movies, Photosynth, and other Cool Stuff」

- マイクロソフトRick Szeliski氏
「Some Further Thoughts on Computational Photography」

ビデオ全部みなくてもスライドは全部見れるようになってます。ただしIEから。

似たテーマでGoogleもPhotoTechEDUとゆうセッションをやってたようだ。こちらは研究というよりもおさらいみたいな感じ?一ヶ月もよくやるわ。

PhotoTechEDU Day 1: Photo Technology Overview

PhotoTechEDU Day 2: Photo Technology Overview Continued
PhotoTechEDU Day 3: Ray Tracing, Lenses, and Mirrors
PhotoTechEDU Day 4: Contrast, MTF, Flare, and Noise
PhotoTechEDU Day 5: Silicon Image Sensors
PhotoTechEDU Day 6: Digital Camera Image Processing...
PhotoTechEDU Day 7: Lossy Image Compression
PhotoTechEDU Day 8: Diffraction and Interference in Imaging
PhotoTechEDU Day 9: Amateur Astrophotography
PhotoTechEDU Day 10: Image Compression Part 2
PhotoTechEDU Day 11: Document Image Analysis with Leptonica
PhotoTechEDU Day 12: High Dynamic Range Image Capture
PhotoTechEDU Day 14: Exposing Digital Forgeries from...
PhotoTechEDU Day 16: Multi-viewpoint Mosaics
PhotoTechEDU Day 18: Non-destructive, Selective, Editing...
PhotoTechEDU Day 19: Inkjet printing...
PhotoTechEDU Day 22: Measuring, Interpreting and...
PhotoTechEDU Day23: Raw Files and Formats
PhotoTechEDU Day 25: Open-source-based high-resolution...
PhotoTechEDU Day 26: Image quality testing and...
PhotoTechEDU Day27: Focus on Resolution
PhotoTechEDU Day 28: "Capturing more Light": Pragmatic...
PhotoTechEDU Day 29: Photographing VR Panoramas
PhotoTechEDU Day 30: Imaging optics for the next decade
PhotoTechEDU Day 31 - Color Balance: Babies, Rugs & Sunsets

2008年7月16日

新メディアラボ絶賛建築中

メディアラボの隣では新しいメディアラボのビルが建設中なのだが、だいぶ形がわかるようになってきた。

どこぞのビルみたいに昼夜通して建設したりはしてないので進みはゆっくりとしたもの。16時ぐらいには仕事やめて帰っちゃってると思う。設計は槇文彦。163,000平方フィート(15143平米)、六階建て。ちなみに今あるビルはWiesner Buildingといって四階建て。

メディアラボのほかに
- List Visual Arts Center
- The School of Architecture and Planning's Design Lab
- Center for Advanced Visual Studies
- The Department of Architecture's Visual Arts Program
- MIT's Program in Comparative Media Studies
も入居するそうだ。ずいぶんアートアートしたラインナップで、技術指向が強いMITの特異点としての地位をますます固めることになりそう。もうMITアニメの部室も作っちゃえばいいんじゃないかと思う。

今のビルの一階には新ビルの模型が置いてあるのだが、同じ角から撮影した写真が以下。


この模型の写真の右奥に見える円筒状の部分が現状ではこう。

一本だけ特別な鉄骨が使われてて、そこにみんながサインしてるのがわかる。

ちなみに旧ビルとの関係はこんなことになってます。

近すぎないかい?私の旧ビルの部屋は新ビルに面してるので外が見えなくなってしまいました。

2008年7月15日

インテルの医療

インテルがこんなものを作っているそうだ。


インテルの医療、といってもピンとこないかもしれないがちょっと前にはこんなのもあった。

医療に対する取り組みはここの記事によると2000年ぐらいから始めてるのだそうだ。目ざといことだ。

こないだのクリステンセン教授の講義の中で、ビジネスモデルについての話があった。世の中のビジネスモデルは大きく分けて以下の三つの種類がある、という話だ。

半導体製造は完全に「付加価値提供者」のビジネスだけど、PCみたいにローカルで処理するデバイスの比重よりも携帯みたいにネットワークで処理するデバイスの比重の方が高くなっている時代だし、どこまで半導体で食っていけるかというとあやしい。ということで「ネットワーク提供者」型のビジネスも追求していこう、ということなんだろう。がんばってんなあ。

2008年7月11日

科学研究のジレンマ

某所でバリバリとご活躍中の研究者の知人がいるんですが、日記が非常に示唆に富んでたんで許可をもらって転載します。パブリックに公開されてないもんで。

できる人とできない人の境界線【研究編】

研究の世界は専門性が問われる世界である。未知の事象の研究もしくは最先端の開発を目標とする。よく研究の世界の外に聞かれる質問に「研究って一体どういうことをするんですか?」というのがあるが、ずばり回答は「新しい発見をする」OR「新しいものを作る」である。これらの目標を達成するために研究者は日々それぞれの分野を一生懸命に勉強する。


結果として、研究者はその分野に非常に精通してNo 1になる。研究分野はざっくり分ければ物理、化学、生物などに分かれるが、もっと細かく分けると最終的には各研究者レベルにまで分かれる。つまり各研究者はその分野でOnly 1であるためにNo 1でもある。最先端の研究をやってる研究者ほどオンリーワン性の傾向が強くなる。

このように書くと世の中の研究者はまるでみな平等であるような感じを受けるが実際はそうではない。では研究の世界で何が優秀か優秀でないかを決定するのだろうか?それは先見性である。「先見性がある」とは平たく言えば「いかに世の中にとってインパクトの大きい研究を見つけ、与えられた時間内に成果を出せるかどうかの判断ができる」ということである。

私は研究の世界にいるが、実は研究の世界ほど下克上が常に行われている世界はないと思う。というのは頭の良い人間がそのまま比例して成功するとは限らないからである。むしろ頭の良さが逆に邪魔になることもある。

ここで昭和62年にノーベル生理医学賞を受賞した現在MIT教授の利根川進(http://www.kahaku.go.jp/exhibitions/tour/nobel/tonegawa/p1.html)の言葉を紹介しよう。

ソース: http://inochi.jpn.org/hitoiki/S03.htm

「大半の学者は、何が本質的に重要か、見分けがつかないから、どうでもいいことで一生を終わっている」(利根川進)

この痛烈な意見は多くの研究者にガツーンと来る言葉だと思います。私はこれに手放しで納得です。更に利根川進はこう続けています。

「科学者の大半は、その手のどうでもいいことを研究している。科学者を自称して、科学をメシのタネにしてはいるけど、科学から見たら、いてもいなくても関係ない」 (利根川進)

「結局、何が本当に重要なのかを充分見きわめないうちに研究をはじめちゃうからです。科学者の一生の研究時間なんてごく限られている。研究テーマなんてごまんとある。ちょっと面白いなという程度でテーマを選んでいたら、本当に大切なことをやるひまがないうちに一生が終わってしまう。だから、これなら,一生続けても悔いはないと思うことが見つかるまで研究をはじめるなといってるんです」(利根川進)

これは彼らしい言葉ですが、非常にもっともだと思います。現実的には適当なテーマで研究していかないと成果がすぐにでないので飯が食っていけないという面もありますが、本質的に正しいと思います。彼は最後に以下の言葉も残しています。

「若いときに大切なのは、本当に重要なものを判断できるジャッジメント能力を身につけること」(利根川進)

なんでいきなりこのような日記を書いたかというと、以下の事があったからです。以前の日記に書きましたが、数人の新しい生徒が私の研究室に入ってきました。彼らを指導する立場である私はいくつかの研究の提案をしました。詳細は言えませんが、これらの研究は非常に興味深く、科学的に意義があります。 ScienceやNatureクラスの科学雑誌に載るレベルの研究です。うまくいけばノーベル賞も狙えるかもしれません。

しかしながら、彼らは経験が薄いせいか、単に頭が悪いのか、この研究の意義が理解できません。結果として彼らはどうでもいい研究のほうを選びました。理由としては「どうもこっちの研究のほうが馴染みがある」とか「バイオは高校時代あまり好きではなかった」とか「以前やってた研究に近い」とか「前に授業で習った」とか、私にとってはどうでもいい理由にしか聞こえません。非常に納得がいきませんが、研究の強制はできないので受け入れるしかありません。

このようなことがあり、上の利根川進の言葉を思い出しました。事実、私の周りにはたくさん頭がいい人がいますが、先見性がある人はごく少数です。これはUCLA、MIT、Harvard、Stanfordなどのトップといわれている研究大学でも同様です。一般的に研究者は一度研究が始まると一生懸命その研究分野について研究しますが、どの研究が重要かという研究は一生懸命しているとは思えません。利根川進が言っているように「若いときに大切なのは、本当に重要なものを判断できるジャッジメント能力を身につけること」というのは非常に重要だとしみじみ感じます。


以下、コメント欄からの追記をコピペ。

「これおもしろそう」というのはかなり主観的で、役に立つかどうかは深く考えず研究するのがよくないね。よく物理屋で多いのが「人類の科学の発展に必要」だとか人類の普遍的なテーマを持ち出すのがいるが、これは単に自分の好奇心を満たすためにこの言葉を利用しているだけだね。NIHやNSFの金は元々は税金だから、それを使って個人の好奇心を満たすというのは非常に悪い行為。世の中で必要とされているものを探求する事は世界に貢献という意味で重要。がんや HIVを治すほうが先進国のリッチな人たちの好奇心を満たすよりもずっと重要。

今の時代に純粋科学ははやらない。もうすでに死につつある。NIHやNSFのお金がどんどん減っていくなかで(実際には増えてるがインフレを考慮すれば減っている)、Pure物理をやるような行為は自殺行為。現代は過去100年の間蓄積された物理の知識を応用する時代。Natureや Scienceを読めばもうPure物理の論文はほとんどでてこないのがわかる。

とりあえず手ごろな分野で成功しないと自然科学の探求とかでかいことは言えない。科学は金がかかるというのを理解しないといけない。


企業の世界では中央研究所による基礎研究が見直されるようになって久しいけど、アカデミアの世界にも似た動きがあるのかもしれない。科学が応用から要求される水準を超えてしまった、科学研究のジレンマとでも言うべき状態にあるのかもしれない。

5000万画素

コダックの5000万画素CCDのニュースがでてた。World's Firstって・・ああCCDだからか。しかしここまでの画素になっちゃうと保存とか編集とかメールで送ったりとか大変だ。

ムーアの法則ってあるけどあれって画素数についても言えそうだな。と思ったらここに書いてあった。
デジカメ版ムーアの法則に基づく、次期新型EOSの予想

ハードディスク容量の増加にはクライダーの法則ってのがあるそうだ。あと通信の帯域幅にもギルダーの法則ってのがあるらしい。比べるとどれが一番遅いんだこれ?

でもまあ人の要求水準はこうゆう法則みたいには増えないってとこが問題だ。どこで折り合いつけるか大変だなこれ。
たとえば1億画素撮れたとしても、それが人が扱う上で別に何のストレスもなく扱えるんだったら何の問題もない。一方で500万画素で十分ですってゆう場合もあるわけで。使う人の経験がどうなるかってとこが基準になるだろうか。

2008年7月8日

Where Stuff Comes From

Where Stuff Comes From: How Toasters, Toilets, Cars, Computers And Many Other Things Come To Be As They Are
Harvey Molotch, 2003.
0415950422

ありとあらゆる物の成り立ちに関する本。
全ての物は「lash-up(間に合わせに作ったもの)」である、というのが主張。たとえばトースターを取ると、習慣だの電源の口だのパンだのといろいろなものがあってようやくトースターという物が形成されている。物には我々が日常生活において受ける力と同じように内なる力と外からの力が作用していて、その結果、変化したり安定したままだったりしている。
また、多くの物は世の中に広く受け入れられた「type form」を持っている。新しい製品が前の製品に似ているのはこの「type form」による。この「type form」は人の認知能力、文化的な意味付けなどによって形成されている。

電子本の未来

早めの夏休みでちょっと更新さぼってました。

ちょっと前、ソニーとパナソニックが電子書籍商売から手を引く、というニュースありました。それに関して以下の感想。

ソニー・パナの電子書籍端末が失敗したのは大手家電メーカー故の宿命か!?

書店で手に入るのと同じレベルのコンテンツが発信されてないんだったらそれはそもそもお話になんないだろ・・という気もするが、果たしてそれだけのコンテンツが用意されていたとしたら普及したろうか。Kindleはそれをやろうとしてるわけだけど。

音楽を聴くということであればiPodはそれまでの音楽体験と変わらない体験を用意できるわけだけど、電子書籍で本を読むという体験と、実際に本を読む、という体験は異質なものだ。本の歴史にある通り、本は一朝一夕に今の形になったわけじゃなくて、多くの試行錯誤の上にこれしかない、という形に辿り着いちゃっている。一方、電子書籍はスクリーンで文を読むわけだけど、その形態は本というよりは一枚の紙面に近い。めくれて積めて並べられてしおりを挟めて貸せておまけに印税も確保できて・・という本の使いやすさを求めることはできない。

かといってハードウェア的に本の形態を再現しようとしても無理な話なんで、本という形態は人類の歴史が続く限り続いていくだろう。とはいえ電子書籍は場所を取らないとか電子書籍の良さがあるんで、それが端末としてPCや携帯と独立して存在できるかどうかは別として、ちゃんとやればちゃんと商売になるんでないかと思う。端末としても電子辞書ぐらいの数は売れるんじゃなかろうか。