3Mのつくりかた
MITのビジネススクールであるスローンスクールの教授にエリック・フォン・ヒッペルという人がいて2005年にこんな本を出してる。
民主化するイノベーションの時代
サイコム・インターナショナル

物やソフトを作るのが昔よりも簡単になってきたため、ものづくりの主体がメーカーからユーザに移りつつある、という趣旨の話だ。たしかに最近はゲーム機やカメラなどはユーザによるハッキングが進んでいる。また、誰でもiPhoneで動作するソフトを作って売ることが出来るAppStoreなんかは良い例で、これはユーザイノベーションをちゃんとビジネスモデルの中に取り込んだ最初の例(販売価格の30%がAppleの取り分になる)じゃなかろうか。
この本の9章に、そうした傾向の中でメーカーの取りえる方法として3つの方法が載っている。
(1)ユーザの作ったイノベーションを製品に取り入れて売る、かつ/またはユーザのためのカスタム製造サービスを提供する
(2)プロダクトデザインのためのキットやツールを売る、かつ/またはプロダクトプラットフォームを売る
(3)ユーザイノベーションのために必要なプロダクトやサービスを売る
構成部品のモジュール化の進んでいるPCはユーザがスペックを指定してのBuilt-To-Orderが可能なので(1)を提供しているといえるし、ArduinoやBug Labsなんかは(2)を提供してるといえるだろう。前述のAppStoreで売るソフトを作るために入ることが必要なiPhone Developer Program($99/年。エンタープライズ向けは$299/年)は(3)だ。
こうした動きはソフトウェアの世界が先行していたが、最近はオープンソースハードウェアなどという考え方もあるし、Nokiaは携帯端末用のSDKを配っているし、Canonもカメラ用SDKを配っている(ただしなぜか日本国内では配布してない。Canonに限らず日本の会社は囲い込み意識が高くオープン志向、ユーザイノベーション志向が見られない)。ヒッペル教授も以下のような例を挙げている。
GEのMRI装置のR&Dディレクターであるマイケル・ハーシュとその同僚は、GEのMRI装置においては、重要で商業的に重要な改良はほとんど全てがGEや競合他社ではなく、先端的なユーザ(Leading-Edge Users)によってなされていることに気がついた。また、ユーザが他社製品ではなくGEの装置を使ってイノベーションを起こした場合にその商業化がより簡単で早くできるということを知った。MRI装置は高価であるため、GEは重要な改良をもたらしてくれそうな人たちに安価で装置を提供するというポリシーを作った。(中略)マネージャーたちはこのポリシーがGEのMRI装置にとって商業的な成功の源泉になっていると考えている。
この本の10章では、以上の知見を生かして、3Mでリードユーザーに着目した商品開発(アンフォーカスグループの考え方に近い)と、従来から行われていた主な商品ユーザ層からニーズを探すという商品開発とを実際に行い、比較した結果がでている。結果はリードユーザーに着目した方が大きな成功につながり、また成功した商品はインクリメンタルな商品の改善よりも、新しい商品ラインに繋がることが多い、ということだった。
教授らはさらにこの結果を受けて、Scotchテープなどの1950年から2000年の間に3Mに導入された新しい商品ラインについても分析して、その性質がリードユーザーに着目した商品開発で出てきた商品に近いということを明らかにしている。
すごく大雑把にまとめると「退屈なマーケティングなんかするより何かエキセントリックな使い方してるユーザ探したほうがいいんじゃないの?」ということじゃなかろうか。








