2008年6月21日

QUICKIES: sticky notes of 21st Century

今日も埋め草を書きます。
メディアラボのPranav Mistryさん(辛い物大好きインド人)の作ってるQUICKIES。


ポストイットに書くとそれがデジタル化されて文字認識されて、過去に書いたものを検索できたりだとか、自動的にメールが出されたり自分のスケジューラに予定が入ったりする(ここまではほんとに動く)。ポストイットにRFIDを付けると、過去に書いたポストイットがどこにあるかもわかる・・ようになると嬉しい(ここは多分ちゃんと作ってない)。

Anotoペンだとか、ペン型コンピュータのようなものも実際に市場にはあるわけだし、将来的には自分の書いたものが全部デジタルに残っていくような世界が来てもおかしくはない。ただそれがどうやって記録に残されていくかというと、ペンが賢くなるよりも目が賢くなる(すなわち、見たもの全てが記録に残る)可能性の方が高いんでないかと思う。Evernoteの先にはそういうものがあるんじゃなかろうか。

2008年6月18日

Objects of Desire: Design and Society Since 1750

Objects of Desire: Design and Society Since 1750
Adrian Forty, 1986.
0500274126

邦訳版
欲望のオブジェ―デザインと社会 1750‐1980
Adrian Forty 高島 平吾

従来、歴史家がデザインの多様性を説明する、以下の説明がなされてきた。
①新しいニーズに対応して新しいデザインが生まれる
②デザイナがその創意と才能を表現しようとしている
これは少しは説明になっているかもしれないが、これで全ての多様性を説明することはできない。そうではなく、製品をその製品が生まれた社会のアイデアとの関係から見なくてはいけない。

という主張に沿って、時代ごとに社会でどのような変化が起こったか、という点に注目しながらその時代の製品の進展を検証している。とりあげられている製品はタイプライタやミシン、オーブンなど。

この考え方を製品の作り手側から考えると、社会の動きがどうなっていくかということをわかっておくと作った製品が生き残りやすい、ということになる。フィリップスなんかはそういうことをやっていってるのだろう。

フォークの歯はなぜ四本になったか

フォークの歯はなぜ四本になったか―実用品の進化論
Henry Petroski 忠平 美幸
458253211X

いろんな物の由来についてたくさん本を書いてて、それがたくさん邦訳されているペトロスキさんの本。著作リストと対応する邦訳は以下の通り。

  • The Toothpick: Technology and Culture (2007)
  • Success Through Failure: The Paradox of Design (2006)
     失敗学―デザイン工学のパラドクス(2007)
  • Pushing the Limits: New Adventures in Engineering (2004)
  • Small Things Considered: Why There Is No Perfect Design (2003)
     〈使い勝手〉のデザイン学(2008)
  • Paperboy: Confessions of a Future engineer (2002)
  • The Book on the Bookshelf (1999)
     本棚の歴史(2004)
  • Remaking the World: Adventures in Engineering (1997)
  • Invention by Design: How Engineers Get from Thought to Thing (1996)
     ゼムクリップから技術の世界が見える-アイデアが形になるまで(2003)
  • Engineers of Dreams: Great Bridge Builders and The Spanning of America (1995)
     もっと長い橋、もっと丈夫なビル―未知の領域に挑んだ技術者たちの物語(2006)
  • Design Paradigms: Case Histories of Error and Judgment in Engineering (1994)
     橋はなぜ落ちたのか―設計の失敗学(2001)
  • The Evolution of Useful Things (1992)
     フォークの歯はなぜ四本になったか―実用品の進化論(1995)
  • The Pencil: A History of Design and Circumstance (1990)
     鉛筆と人間(1993)
  • Beyond Engineering: Essays and Other Attempts to Figure without Equations (1986)
  • To Engineer Is Human: The Role of Failure in Successful Design (1985)
     人はだれでもエンジニア―失敗はいかにして成功のもとになるか(1988)

    最新作は爪楊枝の本だそうで・・それは邦訳するのに勇気がいるなあ。

    「食卓に並ぶ一揃いの食器を形づくった力は、すべての人工物を形づくった力と同じ」なので「それぞれの食器に関する多様な起源が理解できれば」「ありとあらゆるモノの多様性も容易に理解できるようになる」(p.10)という考えをもとに、いろんな物の起源と変化のプロセスについて調べている。

    気になるフォークの歯がなぜ四本になったかというと、次のように説明されている。

    石器
     ↓
    青銅や鉄製のナイフ
     ↓
    二本のナイフによる食事(中世)
     ↓
    ナイフでは肉を切るときにしっかり固定できないのため、二本歯のフォークが考えられる(中東の宮廷で七世紀には使われていた)
     ↓
    十四世紀ごろイタリアでよく使われるようになる
     ↓
    1533年、イタリア人のカトリーヌ・ド・メディシスがのちのフランス国王アンリ二世に嫁いだ時にフランスに伝わる
     ↓
    十七世紀、イギリスにフォーク登場
     ↓
    突き刺した食べ物がすべり落ちやすい、という点を改善するために三本歯のフォークが出てくる
     ↓
    フォークが湾曲して食べ物をすくいとれるようになった(十八世紀?)
     ↓
    十八世紀の初め、ドイツに四本歯のフォークが登場
     ↓
    十九世紀終わり、イギリスで四本歯のフォークが一般的になる

    フォークのように簡単に見えるものにもこんなに時間がかかっているのか・・、しかしおそらくいきなり今のフォークが登場しても世の中には受け入れられなかっただろう。
    ペトロスキさんはこういう事例から「失敗が物の形を進化させる」という結論に至っている。

     ナイフやフォークや箸のようなおなじみの食器類のを、進化という全体像に入れて眺めてみると‐必然的に仮説の域を出ないが‐それらのデザインの基本的な考えを新たな視点から見ることができる。なぜなら、こうした道具のデザインは、偉大な作り手の頭の中で完璧に練りあげられてから生まれるのではなく、むしろ、それらを取り巻く社会、文化、技術に関連し、使った側の(おもに不愉快な)経験を通じて変更が重ねられてゆくものだからである。そして逆に、人工物の形状の進化は、われわれがそれらをどう使うかに多大な影響を与える。
     食器類のような一見単純そうなモノについて、その形がいかに進化してきたかを想像してみるとはっきりわかるのは、人工物が今あるような形になった経緯を理解するための支配的原理として、「形は機能にしたがう」説が不適切だということである。

    (pp.30-31)

    人工物は連続的に進化を続けていっていて、そのきっかけは失敗にある、というのは納得しやすい。ただ現代だと、失敗以外の要因が新しい物を作る動機になっている、ということは増えているだろう。

    ちなみにこの本の中では他には以下のような物が取り上げられている。
    ・ねじとドライバー
    ・ペーパークリップ
    ・ポストイット
    ・本の背表紙
    ・ファスナー
    ・のこぎり
    ・食器セット
    ・缶とその開け方

    ねじに関しては別の著者で「ねじとねじ回し」という本が邦訳されている。誰をターゲットにしてるんだ?読んだけど・・
  • 2008年6月14日

    VeinViewer

    通勤途中にこんな看板が・・


    拡大。


    これはVeinViewerという血管を見る装置。Rameshさんの授業で教えてもらった。IRカメラで血管を撮影してプロジェクタで投影している。
    こんなマニアックな広告板が成立するのはここがMIT周辺で、医療関係の研究者もいっぱいいるからだ。

    中身がどうなってるか気になって特許を探してみた。
    http://www.google.com/patents?q=luminetx&btnG=Search+Patents

    こんな図もあった。これがあると新入りナースに何回も注射をされることはあるまい。これは便利かもわからんね。
    こういうプロジェクタ+カメラのシステムはProcamsってゆう学会もあったりして研究はやられてるけど、商用のシステムとしては自分はこれしか知らない。他にもあるだろうか。

    こういうプロジェクタ+カメラのシステムだと、投射した絵それ自体を撮影してしまう、という問題がある。このVeinViewerだとIRカメラだからたぶん問題ないんだろう。これを解決するものとしてInformation & Communications University, Daejeon, South KoreaでやられてるiProCamというものがある。これはビームスプリッタを用いてカメラとプロジェクタの光軸を一致させてレンズを共有させている。さらに液晶と同期回路を用いて撮像と投射のタイミングが一致しないようにしている。これだと、投射した映像が映りこまないというメリットの他に、カメラとプロジェクタ間のキャリブレーションが不要であること(カメラとプロジェクタがレンズを共有し、光軸・光路長・焦点距離・歪みが一致しているため)、カメラのフォーカスを合わせるとプロジェクタのフォーカスも合うため、ダイナミックに投影位置を動かしても簡単にフォーカスを合わせられること、というメリットがある。実によいアイデア。


    2008年6月13日

    Our Own Devices: The Past and Future of Body Technology

    Our Own Devices: The Past and Future of Body Technology
    Edward Tenner, 2003.
    0375407227

    身の回りにある物が人の身体の使い方をどう変えてきたか、ということを物の歴史を通して見ていく本。大変おもしろい。
    ボトル、ぞうり、運動靴、椅子、楽器の鍵盤、キーボード、メガネ、ヘルメットについて取り上げられている。たとえば楽器の鍵盤の流れを辿ると

    水オルガン。手で操作(起源前3世紀半ば)
       ↓
    パイプオルガン。ハンドル付きバーを手で操作
       ↓
    カウンターバランス付きwood leverの使用でより短い音が可能になる。手で操作
       ↓
    15世紀ぐらいまでにキーが狭く、四角くなって指で操作するようになる
       ↓
    鍵盤の仕組みが弦を叩いて音を出す楽器への転用される
       ↓
    弦を叩くアクションや弦の素材に関して器械的な工夫が続けられる
       ↓
    ピアノの形が定まる
       ↓
    電子楽器の誕生
       ↓
    電子楽器に鍵盤が採用される
       ↓
    シンセサイザの形が定まる

    こういう過程をへて今のピアノがある。鍵盤の歴史はピアノ自体の歴史より古いわけだ。鍵盤の後もいろいろな操作の仕組みは考案されてきたのだけども、定着したものはなかった。
    で、この鍵盤の歴史の中で重要なのがCarl Philipp Emanuel Bach(Johann Sebastian Bachの息子)の新しい運指システムで、親指の強調、取り分け親指をピボットとする使い方を生み出した(従来はもっぱら4本の指で演奏されていた)。この鍵盤の扱い方、というテクニックが結局のところ鍵盤の形を生き永らえさせているらしい。人間、一度なじんでしまったものはなかなか変えられないようだ。

    2008年6月7日

    Technological Innovation As an Evolutionary Process

    Technological Innovation As an Evolutionary Process
    J. M. Ziman, 2000.
    0521623618

    技術についても
    ・遺伝的変異
    ・自然淘汰
    ・環境への適応
    があるのではないか?人工物はたくさん世に出るが、生き残るのはわずかである。

    生物と技術の進化の相違点
    ・新しい人工物はランダムには生まれない
    ・獲得形質が遺伝する・・・これはラマルクの説に似ている
    ・技術には遺伝子に相当するものがない。ミームという便利な用語はあるがあいまいでメタフォリカルである。生物学者は表現型と遺伝子型という語を使うが、技術ミームは人工物そのものと離すことができる。たとえば自転車は古い写真や特許明細書から再現することができるだろう
    ・技術では違うところから持ってきたミームが使える。コンピュータチップのように多くの分野の技術が使われるようなことは生物にはない
    ・人工物の分岐図は家系図よりもニューラルネットに似ている
    ・技術にバリエーションと淘汰はあるが、盲目でもnaturalでもない

    以上のような相違点はあるが、ランダムな変異は進化にとって本質的なものではない。デザインはいつも不完全で不確定である。一般的に、進化のプロセスを進めるための十分な多様性と相対的に盲目なバリエーションが技術にはある。

    技術と、その周りにある文化とは切り離すことができない。ダーウィニズムは会社、慣習、法、法則等に見られる。進んだ社会での技術進化の特徴は
    ・人工物
    ・科学的コンセプト
    ・研究活動
    ・商業的活動
    の共進化である、ということ。技術進化のモデルは生物のそれよりも複雑である。デザインを「淘汰」と同じ様に考慮しなければならないし、慣習や概念に関しても考慮しなくてはいけない。

    進化の現象に関して、システムの構造的なディテールはおそらく重要ではない。進化という現象はランダム変異、淘汰、複製のメカニズムを持つシステムに共通なものなのだろう。このことは人工生命等に関するコンピュータシミュレーションによって証明されている(たとえば、このようなシミュレーションでも進化に緩急が見られる)。

    生物、技術を複雑系という属の一員として考えればよい。ダーウィニズムというよりは、selectionistのパラダイムによって理解するのである。

    2008年6月6日

    The Evolution of Technology

    The Evolution of Technology
    George Basalla, 1988.
    0521296811

    技術の進歩を、生物の進化との類推から考察した本。中心的な主張は「新たな人工物は先行する人工物からしか出現しえない-すなわち新種の人工物は、理論や発明の才や想像による純粋な創造物ではありえない」ということ。

    単純な「必要性」や「有用性」ということだけでは説明することができない人工物の過剰な多様性を、生物進化との類推を生かし、「多様性」「連続性」「新規性」「淘汰」という観点から考察している。

    生物進化と人工物の進化の違いとして、人工物の進化では一度分かれたものが再び融合することがある、ということを以下の図を使って説明している。

    左の図は生物進化を示した図で、通常の樹形図。右の図は人工物の進化を示した図で、一度分かれた枝が再び交わっているものがある。これは、内燃機関と自転車、馬車の枝が交わって自動車の枝を生み、さらに荷馬車の枝と交わってトラックの枝を生む、というような例を示している。

    その他、科学と技術の違いについて述べたり(たとえば技術は人類と同じぐらい古く、科学がなくても技術は生じうる)、発明が天才によって起こされると多くの人が思うのはなぜかということについて考察されたりしている。

    他に以下のようなケーススタディが取り上げられている。
    ・イギリスで使われていたハンマーの形
    ・車輪
    ・アボリジニの武器の変化
    ・石器
    ・綿繰り機
    ・蒸気機関、内燃機関
    ・電気モーター
    ・トランジスタ
    ・エジソンのライティングシステム
    ・有刺鉄線
    ・本書き機
    ・水車とスチームエンジン
    ・機械式刈り取り機
    ・Supersonic Transport
    ・トラック
    ・核兵器
    ・印刷
    ・銃器
    ・方位磁石
    ・Atmospheric Railway
    ・原子力推進による乗り物
    ・手工具
     欧米ののこぎりは押して使うが中国、日本ののこぎりは引いて使う。単純な道具でもさまざまなデザイン、使い方があるという良い例。複雑な道具についてももちろんそう。
    ・木版印刷
    ・鉄道と運河
    ・蒸気、電気、ガソリンによる乗り物
     推進力が電気、蒸気、内燃機関と変わっても自動車の形はあまり変わらなかった。

    MITの図書館群

    科学は世の中で研究されてる最先端だけ見てても別にいいけど、技術は世の中で使われてなんぼ。ということは文化が関わってくるということで、ひいては歴史に学ぶことが大事なんじゃないか。ということで最近はよく図書館に行っている。

    さすがMIT、たいがいの本はある。ただ図書館が分散してて大変。ハーバードの図書館も入れたらえらいことになるだろう。MITの分だけだけどgoogleマップでマイマップを作った。


    大きな地図で見る

    以降、借りて読んだ(眺めた)本のレビューをこのブログにメモ代わりに残すことがあります。

    2008年6月4日

    触覚付き外科手術ロボ

    ジョンホプキンス大学でHaptics Laboratoryっていう研究室をやってるアリソンオカムラ准教授のトークに行ってきた。ジョンホプキンス大は医療系で名の知れてるところで、そんなわけでHapticsの中でも医療にフォーカスしたことをやっていた。

     
    こういう外科手術用ロボット(といってもロボットが自分で勝手に動くんじゃなくて、写真の中だと緑の服を着てる医者が操作している)では現状、医者は映像だけで判断している。これに触覚を加えたらより使いやすくなるだろう・・たとえば硬い物に触れたら硬いとわかる・・ということでそうゆう研究をしてるそうだ。

     
    この写真のように、医者が操作しているマニピュレータ上に力のかかり具合を色付きの円として表示する(例えば強い力がかかると赤い円になる)・・なんてことも試したそうだ。

    こういう外科手術用ロボットとして有名なのはIntuitive Surgeon社のものだ。オカムラ教授の使っているのもそこのものだし、ハーバード大のバイオメディカル研究室に行ったときもそこのロボットを使っていた。もともとは1980年代にStanford Research Instituteが軍の資金提供で研究していたものらしい(参考記事)。


    日本だとオリンパスがこんなのを作ってたりするらしい。ずいぶんものものしい外観。
    このロボットで知恵の輪やってみたい。