ものつくりブログ
広い意味でものつくりに関することを書いていっているブログ
2008年3月29日
2008年3月25日
触覚で視る
触覚ディスプレイという、人に触覚を提示するためのデバイスがある。けっこう最近のものかと思っていたら、昔からあったようで、70年代に製品化されていたようだ。
このサイトに書いてあるのだが、
かつてオプタコンというものがあったらしい。カメラで捉えた文字をピンアレイ(小さなピンが縦横に並んでいて、それぞれのピンが上下に移動する)で指先に提示するというものだ。日本ではキヤノンが製品化していたそうだ。
上の写真ではどう使うかがわからないが、以下のようにして使うものらしい。

ユニバーサロンリポート via kwout
このオプタコンは今ではもう作られていない。今ならそもそも本を読むためなら読み上げソフトなどを使えばいいだろうから、必要性がなくなったのかもしれない。でもそのコンセプトは生き続けていて、今は「額網膜システム」というものが開発されているらしい。

ユニバーサロンリポート via kwout
触覚が伝えられる情報量はそもそも視覚の伝えられる情報に遠く及ばないが、人工視覚の実現にはまだまだ時間がかかりそうなので、繋ぎとしてこういうものがあってもいいかもしれない。
2008年3月21日
またDesign Continuumの中の人の話
またDesign Continuumの人の話があった。こんどは創立者だ。
「Learning from what people can't say」という信念で、アンケートからはわからないユーザのふるまいなどに気付いてそれをデザインに生かす、という話が多かった。たとえばシャワーの開発をしたとき、シャワーヘッドの中などにカメラを入れてユーザのふるまいを観察してわかったこととして「60%の時間、人々はシャワーを『避ける』ことに使っている」という例をあげていた。なるほどそれは観察してみないとなかなか気付かない。
開発は既存のものの改良、という小さなステップを積み重ねていくことが多いけど、理想を思い描いてそこから逆に求めていくやり方もある。
ポストインダストリアルデザイン、という話もあった。曰く、今の世のほとんどの製品は「グローバルで」「富んでいて」「産業的な」方向を向いている。
今後はサステイナビリティやローカルな文化、Bottom of the Pyramidに向かっていくんじゃないかという話だった。
関連→Design for the other 90% 日本メーカーは格差パソコンを作れるか?
先進国の市場は人口の減少とともにどんどん縮んでいくんだから間違いなくそうなるだろう。
Design Continuumはボストン、ミラノ、ソウルにあるが、今度カリフォルニアにできる、といううわさがあるそうだ。
2008年3月20日
2008年3月15日
赤外線の向こう
RedShift Systemsという会社の中の人の話があった。Thermal Light Valveという、赤外領域の熱放射(熱源が出している電磁波)を光に変換するフィルタを使ったカメラを作っているそうだ。用途としては、監視用途とか軍事用途だそうな。
こちらがRedShiftのサイト。
この指先に持ってるやつがThermal Light Valveだそうな。なんて都合のいいデバイスなんだ。
ところで米軍とかが使っているナイトビジョンには三世代あって、
第一世代:通常の照明の代わりに、赤外線ライトで対象を照らし、赤外線フィルタ越しの光学機器で観測するタイプ。赤外線は人の目には見えないので、暗い所で赤外線ライトで照らし赤外線カメラで観測すれば相手に知られず暗闇が見える。
第二世代:スターライトスコープ(微少な可視光線を増幅して像を作り出す)カメラの光に対する感度を高め、わずかな光でも明るく見えるようにする。(実際に星明りで見えるかはともかく)夜間の星の明かりくらいの光を増幅するたとえに由来する。実際の増幅倍率は500~数万倍である。
第三世代:パッシブ式赤外線スコープ(物体から放出される赤外線を増幅・可視化する)。あらゆる物はそれ自身の温度によった赤外線を出している。(放射温度計など参照されたし。)例えば兵士や対空砲台が森に隠されてたら、その微妙な温度差による赤外線の強さを画面に表示して見分けられる。 第二世代までは何らかの光源が必要だったが、第三世代は完全に密閉されまったく光が無い状況でも見ることが出来る。
なのだそうだ(wikipedia)。だからRedShiftのやつは第三世代にあたるわけだ。
可視光以外の領域の電磁波を物を見るのに使うという技術では、最近こんなニュースがあった。
服の下まで見通せるカメラ、英企業が開発
これ、テラヘルツってゆう赤外線とマイクロ波の中間あたりの領域の電磁波を見えるようにするんだけど、人体からもこのテラヘルツ領域の電磁波が出てて、それを捉えるらしい。テラヘルツ波を照射してその反射を捉えるわけじゃなくて。
こんなものありました。
暗闇で録画もできる懐中電灯
これは赤外線使ってる。
2008年3月8日
Design Continuumの中の人の話
Design Continuumというデザイン会社の人の話があったので行って来た。簡単に言うとIDEOのような会社だ。会社はボストンとミラノとソウルにあるんだが世界中で仕事してるらしい。
会社の紹介。デザインとイノベーションのコンサルタントしてます。
関わったプロダクトの紹介。ReebokとかパンパースとかOLPCとか。いい意味で節操ない。
デザインって言ったらこの右にあるフィリップ・スタルクのレモン絞りみたいなの思い浮かべる人多いけどそうじゃないんだよね(これ使いづらいんだよね)。僕らはそうじゃなくてこのパンパースのような、デザインのためのデザインじゃないものに関わってます。
いいアイデアをどう生み出すか。一つのアプローチとしては、問題から始まって、その解決となる方法を見つけること。もう一つのアプローチは、人が価値を感じられる経験を生み出すことを考えること。
例として、あるクレジットカードのブラックカードのデザインを考えたときに、カードを置いたときの音が心地良い響きになるようにデザインした、という例を挙げていた。
たいていの会社はこの左ばかりをやってしまうんだろう。
締めの言葉はウィトゲンシュタインの言葉。「一番大事なことは単純で身近すぎて気が付かないところにある」。
単純で身近なことを気付く方法をいっぱい持ってるってところがこういうデザイン会社の強みなんだろう。
2008年3月6日
デザインとやわらかい心
ニューヨークのMOMAでDesign and Elastic Mindというイベントをやってるそうな。サイトを見てみたら、わりとメーカーのコンセプトモック的なものが多く出品されてるようだ。ちなみにサイトはFlashが使われててものすごく見づらい。たくさんあるのを我慢して全部見て、面白かったのをピックアップしてきた。
Hektor
最近はどこでもよく壁にスプレーで落書きしてあるけど、それを自動的にやってくれる仕組み。ノートPCと、それに繋がった2つのモーター、ベルト、スプレー缶、缶ホルダーからなる。2つのモーターだけで制御してるのが美しい。リンク先に動画あります。
AMOEBA
阪大のもの。メカニカルユニットで囲った内部の水面に、任意の波の形を描ける。アルファベットもいける。面白いけど何に使えるのかなこれ。
Lab-on-a-Card
貧しい地域のための診断システムのモックアップ。カードにサンプルを付けて(血液など)無線で送信すると、その結果が20分以内に返ってくる。妊娠検査キットが薬局で売られているように(昔はウサギとかを使ってたらしい。検査のたびに一匹のウサギがご臨終に・・)、他の病気についてもこういう検査キットが薬局で売られるような時代が来てもおかしくない。
Newton Virus
感染するとデスクトップのウィジェットが重力を受けて下に落っこちるようになるコンピュータウイルス。ビデオ面白いです。加速度センサを使って、画面のどっちが下になっているかがわかるようにしている(今のパソコンはたいてい加速度計が入っている、たぶんハードディスク保護のため)。
Motorola Sparrow
これはすぐにでも作れて実用性高そう。RFIDスキャナ、POSシステム、コミュニケーションシステム、クレジットカードリーダが一体になっているもの。ゆくゆく腕時計にはこういう機能が入ってくるかもしれない。
Digital Remains
デジタル位牌。故人を偲ばれるデータが中に入っていて、Bluetoothアクセスできる。たしかに位牌はこんな感じになってもおかしくない。位牌的な文化は全世界的にあるだろうか?
Contour Crafting
3Dプリンタの建築バージョン。壁は作れそうだがこれで天井は作れるだろうか?月面とかで素材を現地調達できるんならば、基地はこれで作ってもいいかもしれない。
PlayPumps
子供が遊具を回転させて遊ぶと、そのエネルギーで水を汲み上げるポンプ。「ちゃんとまじめに遊びなさい!」て怒られそうだ。
Touch Messenger
盲人用の携帯電話。首からさげられるとこはストラップみたいな感じにしたほうが好まれるんじゃなかろうか。テキストメッセージもできるという触れ込みだが打ち込んだテキストはどうやって確認するんだろう。
Nokiaの中の人の話
Nokiaの中の人の話があったので行って来た。Nokiaリサーチセンターパロアルトで昨年から働いているそうな。
まずは研究のスコープ。「20年先が見えるほど賢くないので~」とゆう前置きから始まる。
上のライン、BUはビジネスユニット、つまり事業部。下のライン、NRCはNokiaリサーチセンター。25%は3年先のこと、50%は3年から5年先のこと、25%は5年から7年先のことをやる。それから先の世界はアカデミアに任せる。
次にリサーチセンターパロアルトのスタッフの数。
昨年末の時点で50人で、どんどん増やしているということがわかる。こうゆうデータは日本の会社だと出さないのだろうが、アメリカの場合は人材の流動性が高くて良い人材をどんどん取ってこないといけないのでオープンにしてるんだろうかと思う。日本の会社も変に自意識過剰にならずにオープンにしちゃえばいいのに。
やってる研究の紹介はいくつかあったんだけど、その中から少しだけ。スタンフォード大と一緒にやっているMobile Augmented Reality。携帯についてるカメラで風景を写すと、その風景の中の建物とかを認識して建物の名前が出てきたりする、というもの。
パロアルトの話はここまで。こういう研究センターが世界7カ国に12箇所あり(参照)、1100人以上が働いてるそうだ。さすがNokiaでっかい。
Nokia Morph・・・これはパロアルトではなく英国ケンブリッジでやっている。携帯電話なんだけどナノテク使ってて自由に変形する携帯。ただしコンセプトのみ。一緒にやってるケンブリッジ大のナノサイエンスセンターの人は赤面しながらやってるだろうか。
まあでもそうゆうのもあっていいと思う。
ビデオはこれ。
なお、これに関しては簡単なレポートを配布しました。もらってない方でご所望の方はご連絡ください。
2008年3月2日
フランク・ゲーリーの失敗
MITにはフランク・ゲーリー設計のビルがある。スタタセンターだ。

設計当初から賛否両論のこのビル、現在でも絶賛賛否両論中だ。去年の11月にはMITから「雨漏りとかメンテナンスに金がかかりすぎる!」として訴えられた。内部構造も複雑で、どこをどう歩けばどこにつくのやらさっぱりわからない。
だいたい彼は設計のやり方自体がテキトーだ。このビデオの中にも出てくるが、彼のやり方は
①テキトーなスケッチをもとにテキトーな模型を作る
②テキトーな模型をもとに事務所の人が死ぬ思いで施工可能なデザインに落とし込む
というものだ。この②の部分にGehry Technologiesの作ったソフトが使われている。このソフトでは構造計算のシミュレーションもできるので、それが本当に施工可能であるかがわかる。
ただ雨漏りのシミュレーションは入ってないようだ。
建築には無駄が多い
CADやらCGソフトで有名なオートデスク社のバイスプレジデントの人のトークがあったので行って来た。建築の世界におけるプロセス革新の話。
問題点は建築の世界で生産性が長い間上がっていないということ。
この図は横軸が時間(1964年から1998年まで)、縦軸が生産性(GDP/労働時間)。1964年を100として、時間が経つにつれて建築以外の産業の生産性が上がっている(青い線)のに比べて、建築では生産性が上がっていない。むしろ下がっている(水色の線)という衝撃のグラフ。
では、これからどうすればよいか?
これは横軸がプロジェクトの進行度。赤い線がプラン変更にかかるコストで、プロジェクトが進行するほどプラン変更にかかるコストは大きくなる。緑の線はプラン変更がコストに及ぼす影響度で、プロジェクトの最初の方ほどプランの良し悪しがコストに及ぼす影響が大きい。白い線が今のやり方でプロセスごとにかけられている労力で、真ん中あたりで労力がかかっている。水色の線がこれからはこうすべきという線で、プロジェクトの進行があまり進んでないときに労力をかけてその後の問題をつぶしておけば結果として総コストが下がることになる、という趣旨。
白い線の山になっているところはConstruction Documentationという段階だが、たとえば去年から日本で施行されてる改正建築基準法はここのコストを一段と増やす方向に持っていったんだろうな。
問題点や解決法は製造業と同じなのだが、建築の世界の方がクライアント/建築家/施工者とプレーヤーが多く文化も統一しにくいために、製造業の世界よりは問題の解決が遅れているようだ。
トークの締めはフランク・ゲーリーの言葉。
コンピュータの助けで建築家がちゃんと運転手の役目を果たせるようになるんだ。という言葉。そんな彼のところではオートデスク社のソフトは使わずに、製造業でよく使われているCATIAというソフトを使っている。Gehry Technologiesという彼の会社では、CATIA上で動く建築業界向けのパッケージも売っている。
建築業界の生産性が上がらないのはオートデスク社にもかなり責任あるのかもと思ってしまった。




