以下は、米国マサチューセッツ工科大学において、
現地時間の11月18日午前11時に発表された内容の日本語訳です。



子供のための教育施設を設立
〜大川功氏からの2700万ドルの寄付により誕生した
「未来の子供たちのための大川センター」〜

1998年11月18日 マサチューセッツ工科大学

デジタル時代における子供たちの暮らし方、学び方、遊び方を変容させることを狙って、マサチューセッツ工科大学(MIT)は、本日、「未来の子供たちのための大川センター」(以下、大川センター)の設立を発表いたしました。

新センターは、(株)CSKおよび、(株)セガ・エンタープライゼスの会長である大川功氏からの2700万ドルの寄付で誕生しました。寄付金額は137年にわたるMITの歴史の中でも最大級であり、個人の日本人から海外の団体に贈られるものとしても最大の規模と思われます。

「子供たちが情報社会の創造を先導しています」と大川氏は語りました。「このセンターは、世界中の現在の子供たちと未来の子供たちを助けたいという私の思いから生まれました。」

MITメディア・ラボ拡張の一環として、大川センターは、現在のメディア・ラボ施設の隣に建設される新しい建物に設置されます。「子供たちは、最も貴重な天からの授かりものだ」と大川センターの共同設立者であり、メディア・ラボのニコラス・ネグロポンテ氏は語ります。そして、「子供の生き方を改善する事が、世界的な豊かさと健康と平和への最善の道だ。」とも語ります。

大川センターは、最新のデジタル技術が、子供たちの学び方、教育に抜本的な変革を行う、歴史的に絶好な機会をもたらすという信念に基づき設立されました。「デジタル革命は世界規模の教育革命を必要とし、またそれを可能にします」と語ったのは、メディア・ラボの学習調査の準教授であり、レゴ パパート ミチェル・レズニック氏。「私たちの目的は、子供たちの学び方、何をどのように、そして誰と学ぶかに革命を起こすことです」。

大川センターの研究員たちは、デジタル技術の設計を、世界中の子供たちのニーズにかなうように練り直します。同時に、子供の特性そのもの、そして子供たちがデジタル社会の中で果たす役割についても再考します。研究者たちは、市街地の近くの子供から途上国の田舎の教室がひとつしかない学校の子供まで、多彩な文化的設定の中にいる子供たちとともに研究します。

大川センター設立は、世界の主要問題に取り組むための計画と行動を作りだすために世界中の子供たちが集った1998年ジュニア・サミットで発表されました。139カ国1000人の子供たちがオンライン上で協力し、MITでの1週間の討議のために100人の代表者を選びました。大川氏は1995年、東京での最初のジュニア・サミットを提唱し、主催しました。
大川氏は、ビジネス用ソフトウェアとサービスの会社である(株)CSKを1968年に設立。1984年には、(株)セガ・エンタープライゼスを買収し、家庭用エンターテインメントソフトの会社として、その発展を進めてきました。大川氏は現在90社におよぶ企業の舵取りをし、その売上高合計は約75億ドルになります。その他、大川情報通信基金を通じて、情報通信分野における研究・開発そして教育の助成や、日本政府への経済政策の助言も行っています。

「子供たちの学習を支援するために、新しいアイデアと革新的技術を開発する」というメディア・ラボの長い伝統にしたがって大川センターは築かれます。シーモア・パパート教授がその先駆的研究で、子供たちの学習、教育に対するメディア研究所の有名な「構造主義的」アプローチを確立しました。それは、子供たちは設計、発明、実験のプロセスを通じて学ぶということです。目標は「厳しい楽しさ」、つまりチャレンジングでありながら遊びに満ちていて、大変な労力を要求されながら成果が大きいプロジェクトです。

この学習スタイルを支援、普及させるために、メディア・ラボの研究員たちは世界中の数百万人の子供たちが使った技術を発明しました。今年、レゴ社はメディア・ラボの調査に基づいて、「プログラム可能なブロック」という商品を発表しました。先ごろ、メディア・ラボは「明日のオモチャ」を発明するという目標のもと、玩具会社とエレクトロニクス会社からなるコンソーシアムを作りました。

大川センターがこれらの仕事を拡大、拡張させていきます。世界中から集まった研究者たちが、新しいデジタル環境の設計で、人間のあらゆる表現方法を利用して、協力します。音楽、舞踊、物語を語ること、視覚芸術のための先進技法が、最先端のコンピューター、ネットワーク、インターフェイス・デザインを互いに駆使して開発されます。大川センターの研究課題には、特に最貧国に重点を置いた、世界の国々との積極的結合があります。

槙 文彦氏が率い、東京に拠点を持つ建築会社マキ&アソシエイツが大川センターが入る新しい建物の設計に選ばれました。建物は2003年にオープンする予定ですが、大川センターの研究は現在のメディア研究所の建物内ですぐに開始されます。

「大川氏からの特別な贈り物のおかげで、MITに技術と子供たちの研究分野で世界のリーダーになる機会がもたらされました」と、MITのチャールズ・ヴェスト学長は語りました。






(米国MITでの発表に際しての大川会長からのコメント)

デジタル・チルドレンの未来のために

1998年11月18日
(株)CSK、(株)セガ・エンタープライゼス
会長 大川 功


ジュニア・サミット創設者の一人として、大きな関心を持って、私たちの子供たちの将来を見守っています。さあ、グローバル・インフォメーション・インフラストラクチャーのユーザーになる子供たちの声を聞いてみましょう。


<ジュニア・サミット>
ジュニア・サミットは1995年2月、ブリュッセルで開催されたG7インフォメーション・ソサイエティー・コンファレンスの場で、私が提唱して始まりました。会議での主要トピックは、グローバル・インフォメーション・インフラストラクチャー(GII)のアイデアをどう現実のものとするかでした。どのようなインフラストラクチャーを構築すればよいのか、どのような種類のコンテンツを開発すればよいのか、知的所有権とプライバシーをどのようにして守るのか、どのように規制緩和すればよいのか、でした。

来たるべきGII社会での主役は私たちではなく、私たちの子供たちだと信じています。彼らはコンピューターに馴れ親しんでいます。言い換えるならば、彼らがGII社会を利用する主体なのです。したがって、私たちは、GIIユーザーとなる子供たちの声を聞かなければなりません。

多くの方々が私の提案に賛成してくれました。その方々の努力のおかげで、最初のジュニア・サミットが1995年11月、東京で開催されました。大きな成功をおさめました。

世界はハイレベルな情報社会に向かって動いています。「シンボルは去り、イメージがやって来る」。これはフランスの哲学者ジャン・ギトンの言葉で、私の好きな言葉です。来たるべき「イメージと感覚」の時代には、子供たちの卓越した感受性と創造性は必要不可欠なものです。依然、環境、エネルギー、世界人口、人種間紛争等々、微妙で難しい問題が残っています。しかし、既定概念にとらわれることなく、自由に発想する子供たちのネットワークが世界を平和に導いていくと信じます。

イスラエル出身の少女が、インターネットで、なぜイスラエル人とアラブ人は仲が悪いのですか、なぜ神様はお互いを戦わせるのですか、どうしたらイスラエル人の子供たちはアラブ人の子供たちと話ができるのですか、とたずねてきたことを、はっきり覚えています。この無垢な質問には深く感動しました。私たちは心にステレオタイプの価値観を宿していない子供たちの意見を聞くべきだと、私は強く思います。

ドイツの哲学者、ハイデガーがかつて、ギトンにこう言ったそうです。「もし、あなたが哲学か宗教を勉強したなら、子供たちの質問を受けなさい。子供たちを通じて、あなたは真実を見つけることができるでしょう」と。私は、ジュニア・サミットの精神は来たるべき社会にとって非常に重要なものだと信じます。GIIは私たちに、東洋と西洋の文化的ギャップ、南と北の経済的ギャップを埋める最後のチャンスを与えてくれると思います。

第2回ジュニア・サミットがMITで開催されていることを、私はこのうえなく嬉しく思います。また、ジュニア・サミットの運動が世界中に広がっていくことを信じています。


<未来の子供たちのための大川センター>
MITは、未来の子供たちがジュニア・サミットの基調をなすアイデアを発展させるための現在進行形の研究機関として、大川センターを提案しました。私の願いにかなった提案であったので、私の個人的なファンドからMITに2700万ドルを喜んで寄付いたしました。ジュニア・サミットの活動や大川センターでの研究を通じて、世界中の子供と大人が、対等のレベルで互いに意思の疎通を図り、互いの意見を理解し、ともに美しい未来をつくっていければ、というのが私の希望です。


<大川 功>
1968年、早稲田大学を卒業。ビジネス用ソフトウエア、サービス会社であるCSKを設立。過去30年にわたり、グローバルな情報社会を夢見ながら、CSKを拡大させてきました。1982年、CSKは日本のソフトウェア会社では初めて、株式上場を果たしました。

1984年、大川氏はセガ・エンタープライゼスを買収。以来、家庭用エンターテインメント・ソフトの会社として、その発展をすすめてきました。1998年11月、デジタル時代の子供たちのために、ドリームキャストを発表する予定です。ドリームキャストは、新世代ゲーム機であるだけでなく、革新的なインターネットマシンでもあります。
大川氏は現在、CSKグループ90社を率いています。グループの年商は総額約75億ドルになります。大川財団を通じて、彼は情報分野の研究、開発、教育を支援しています。社団法人ニュービジネス協議会の活動を通じて、新事業促進の旗頭を務めています。数々の委員会のメンバーとして、大川氏は経済政策に関して、日本政府に助言も与えています。






オオカワ・センター・フォー・フューチャー・チルドレン
〜未来の子供たちのための大川センター 設立に関する背景〜

1998年11月18日
MITメディア・ラボ

<大川センターの必要性>
子供たちは未来そのものです。私たちが世界平和の達成、健康的な暮らし、経済発展、地球規模での持続可能性といった世界の主要な諸問題の解決を望むのであれば、世界の子供たちに豊かな学習機会を提供しなければなりません。地球規模の健康、富、そして平和に至る最良の方法は、疑いもなく、教養ある創造的な人々の存在です。

しかし、現在の世界を見渡すと、教育のやり方は目を覆いたくなるほど時代おくれです。科学技術が農業、薬品、産業を根本的に変容させたのに対して、子供たちの学習方法はほとんど変化がなく、前世紀から受け継いだ考え方を踏襲しています。

今、新しいデジタル技術によって、子供たちの学習、教育を根本的にかつ地球規模で変えるための歴史的な機会がもたらされています。バイオテクノロジーの進歩が農業において「緑の革命」を可能にしたように、新しいデジタル技術が、教育において「学習革命」を可能にしています。

オオカワ・センター・フォー・フューチャー・チルドレン(未来の子供たちのための大川センター:以下大川センター)は、地球規模の学習革命の礎を築こうという初めての、そして大規模な試みです。大川センターは、新しいデジタル技術が、子供たちがどう学ぶのか、何を学ぶのか、誰とともに学ぶのか、を変容できる(また変容するに違いない)という信念のもとに設立されます。

子供たちはどう学ぶのか:
デジタル技術のおかげで、子供たちは、直接に究明し、表現し、経験することを通じて、主体的に学びながら、より積極的に、独立心旺盛に学ぶことができるようになります。「教えられる」ことから「学び取る」ことに重点が変ります。

子供たちは何を学ぶのか:
現在、子供たちが学校で学んでいることのほとんどは、紙と鉛筆の時代のために作られたものです。新しいデジタル技術を使えば、子供たちは、デジタル時代以前には子供には複雑すぎて無理だと思われたプロジェクトを実行する(そして概念を学ぶ)ことができます。

子供たちは誰とともに学ぶのか:
世界中がつながっていることで、世界中の子供たち(大人たちも)がプロジェクトで協力し、お互いから学ぶ、新しいタイプの「情報構築社会」が可能になります。これらの努力を行なうためには、コンピューターの使用と学習に対する多文化的、多言語的、そして多形態的なアプローチが必要となります。


<大川センター設立の基盤>
大川センターは、株式会社CSKの設立者で会長、株式会社セガ・エンタープライゼス会長である大川功氏からの2700万ドルの寄付金によって実現しました。MITメディア・ラボの大々的な拡張の一環として、大川センターは、MIT構内にある現在のMITメディア・ラボの隣に建てられる建物に入居します。新しい建物は、建築家槙 文彦氏の設計で、2003年にオープンする予定です。

大川センターは、子供たちの学習を支援するために新しいアイデアや革新的技術を開発してきたメディア研究所の長い伝統の上に築かれます。シーモア・パパート教授がその先駆的研究で、子供たちの学習、教育に対するメディア研究所の有名な「構造主義的」アプローチを確立しました。それは、子供たちは設計、発明、実験のプロセスを通じて学ぶということです。目標は「厳しい楽しさ」、つまりチャレンジングでありながら遊びに満ちていて、大変な労力を要求されながら成果の大きいプロジェクトです。

この学習スタイルを支援、普及させるため、メディア研究所の研究員たちは、世界中の数百万人の子供たちが使った技術を発明しました。今年、レゴ社はメディア研究所の調査に基づいて、「プログラム可能なブロック」という商品を発表しました。先頃、メディア研究所は「明日のオモチャ」を発明するという目標のもと、玩具会社とエレクトロニクス会社からなるコンソーシアムを作りました。

大川センターがこれらの仕事を拡大、拡張させていきます。世界中から集まった研究者たちが、新しいデジタル環境の設計で、人間のあらゆる表現方法を利用して、協力します。音楽、舞踊、物語を語ること、視覚芸術のための先進技法が、最先端のコンピューター、ネットワーク、インターフェイス・デザインを互いに駆使して開発されます。大川センターの研究課題には、世界の国々との積極的結合があり、特に最貧国との結合に重点を置ています。

子供たちは大川センターとの関係でも、研究のパートナーとして、重要な役割を果たします。大川センターは、新技術の開発と新しい学習方法の開発に、子供たちが積極的に参加する場として設計されます。

<大川センターの指導原則>
大川センターでの研究は以下の指導原則により行なわれます。

●直接的探求:子供たちは小学校にあがるまでは、自分で直接(這い、触り、しゃぶること。つまり、探求することで)世界を学びますが、小学校からはより進んだ考え方を「教えられる」必要がある―これが伝統的な見解です。大川センターでは、子供たちが年齢を重ねていきながらも、自分で直接探求し、実験し学び続けることを可能にするデジタル技術を開発し「一生涯続く幼稚園」を目指します。

●直接的表現:子供たちは、自分で表現するのではなく、大人たちから考え方を「吸収する」ことに専念すべきだ―これが伝統的な見解です。自分自身に関することですら、往々にして、大人たちから聞いたことだったりするのです。大川センターでは、大人が子供たちに代わって語るのではなく、子供たちが自分で作った物語や考えを語る(それも幅広い、多様な聴衆に対して語る)ことを可能にするデジタル技術、子供たちが自分自身の声を見つける手助けになるデジタル技術を開発します。

●直接的経験:新しいコミュニケーション技術は、子供たちを世界中の他の人たちとつなぐことを可能にしながら、子供たちの手が届く範囲を広げます。地域の文化(子供たちが校庭や家庭で経験すること)は重要であり続けるのですが、この経験が国境という障害を小さくします。子供たちは知的なエージェントとして、また、現実および仮想現実の社会の貴重なメンバーとして、いくつもの異なる自分を発展させていきます。子供たちは、地理的な国境、文化、言語、年齢を越えて自らを表現することに馴れ親しんでいきます。

●多文化:多くの技術は、非常に限られた文化的スタイルとアプローチの組み合わせを支援するに留まります。“地球規模でつながっている”ことが、すべて異なる文化のもとにある子供たちの参加を促しながら、より広範なアプローチに対するニーズと機会がもたらされます。大川センターでは、様々な参加方法と使用方法ンを提供する一方で、世界中の子供たちが互いの異なる文化的伝統を分かち合い、学ぶことを促進させる、新しいデジタル技術を開発します。

●多言語:極めて沢山の種類の言語が世界中で話されていることが、グローバル社会の形成にとって大きな障害のひとつだと考えられてきました。大川センターでは、子供たちが他国語を習得するのを助けながら、また、母国語の価値を高めさせながら、言葉の壁を越えて意思の疎通を図れる新しいツールを開発します。

●多形態:子供たちとコンピューターとの仲立ちをする方法は非常に限られています。つまり、ひとつにキーボードを叩き、マウスをクリックする方法があります。もうひとつに、文章と絵があります。大川センターでは、言葉や身振り手振りを理解、表現するコンピューターの能力を拡充することで、子供たちとコンピューターの双方向性を充実させます。これらの新技術で、より広い年令層、より広い文化的伝統を持つ人たち(読み書きできない人たちも含みます)に、コンピューター利用の道が開かれるでしょう。



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